引き止め・カウンターオファーへの対処法 ― 大きい金額に流されないために
退職の意思を伝えた後、現職から引き止めやカウンターオファーを受けることがあります。なぜ多くの場合それを受けるべきではないのか、判断の基準を整理します。
転職先が決まり、現在の会社に退職の意思を伝えると、上司や人事から引き止めの話を持ちかけられることがあります。「給与を上げるから残ってほしい」「役職を上げる話も進めている」といったカウンターオファーは、退職を決めたはずの気持ちを大きく揺さぶります。転職活動を通じて実際に高く評価されたという事実を突きつけられた直後に、現職からも同じように評価の言葉をかけられると、判断が一気に難しくなるのは自然なことです。
カウンターオファーを受けた人のその後
よく知られているのは、カウンターオファーを受けて残った人の多くが、結局その後半年から一年程度で会社を去っているという傾向です。この事実は、カウンターオファーそのものが悪いということではなく、カウンターオファーが「辞めたいと思った本当の理由」を解決しないケースが多いことを示しています。給与が上がったとしても、上司との関係、評価制度への不満、成長機会の乏しさ、社内の人間関係といった根本的な問題は、金額の提示だけでは変わらないことがほとんどです。
さらに、一度退職の意思を明確に伝えた後は、社内での見え方が変わってしまうことも少なくありません。「一度は辞めようとした人」という認識は、本人が意識していなくても、昇進や重要なプロジェクトのアサインの場面で無意識に影響することがあります。カウンターオファーを受け入れて残った後、以前と同じように評価されると期待しない方が現実的です。
なぜ会社はカウンターオファーを出すのか
会社側がカウンターオファーを出す動機は、必ずしも「あなたを正当に評価していなかったことに気づいた」というものではありません。多くの場合、採用活動にかかるコストと時間、後任が見つかるまでの業務の穴、引き継ぎの負担といった短期的な事情が背景にあります。つまり、カウンターオファーは「あなたを失いたくない」という気持ちと同時に、「今すぐ代わりを探すのが大変だ」という会社側の都合が混ざったものであることが多いのです。この構造を理解しておくと、提示された条件をどう受け止めるべきかの判断がしやすくなります。
判断の前に自分に問うべきこと
カウンターオファーを検討する際は、まず「なぜ転職しようと思ったのか」という最初の理由に立ち返ることをお勧めします。給与への不満だけが理由だったのか、それとも仕事内容、キャリアの方向性、働き方、職場の人間関係といった、金額では解決しない理由が含まれていたのか。多くの場合、転職を決意する理由は複数の要素が絡み合っており、給与はその一部に過ぎません。
もし給与が唯一の理由だったとしても、「なぜ自分から言い出すまで、この待遇が提示されなかったのか」という問いは残ります。転職の意思を伝えたことで初めて動いた会社が、今後も継続的に公正な評価をしてくれるとは限りません。すでに転職先から内定を得ている状況であれば、提示年収が期待より低い場合の対応で扱っているような交渉の余地が転職先側にもあるかもしれず、必ずしも現職に残ることだけが選択肢ではない点も踏まえて検討する価値があります。
引き止めの場で感情的にならない
引き止めの面談は、上司やマネージャーとの個人的な関係が絡むため、感情的になりやすい場面でもあります。日頃お世話になった上司から「困る」「考え直してほしい」と言われると、断ることに強い罪悪感を覚える人も少なくありません。しかし、ここで曖昧な返事をしてしまうと、後になって判断がより難しくなります。
「大変ありがたいお話ですが、今回の決断は給与だけでなく、今後のキャリアの方向性を含めて考えた結果です」といった形で、感謝と決意の両方を落ち着いて伝えることが有効です。転職先の企業に対してすでに返事の期限が迫っている場合は、その事実も含めて正直に伝えることで、引き止めの話し合いが不必要に長引くのを防げます。
引き止めの場面を想定して準備しておく
引き止めやカウンターオファーの場面は、事前に予期していても、実際にその場に立つと心が揺らぎやすいものです。何を言われても自分の決断を落ち着いて伝えられるように、事前に会話の流れをシミュレーションしておくことは大きな助けになります。
Prepairの給与交渉シミュレーションでは、上司役のCamと退職や引き止めをめぐるやり取りを練習できます。Camの態度は「理性的」「強硬」から選べるため、感情に訴えかけられるケースや、強めに引き止められるケースなど、複数のパターンを想定した準備が可能です。会話の後にはスコア付きの振り返りがあり、自分の伝え方のどこが曖昧だったかを客観的に確認できます。